秘匿の冬宵
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そらひさんへ(いちを)
 もうすぐ最終更新から6週間経つわけだが

 どうしても忙しいなら終わりにしようか。
 続きは気になるけど、書けないなら仕様がないし。

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【2008/01/30 01:06】 | 雑談 | トラックバック(0) | コメント(0)
いちを 27

 そして扉を引いた。
 大きな金の額縁のようなその扉は、毛足の長い絨毯と険悪そうに擦れながら、じりじりと開いた。
 フゥル、と名乗ったその――その、ねじくれまがった人形? の、ようなもの――は、目玉のあるほうの眼窩で足元をねめつける。足には、意外なほど大きな靴を履いていた。それだけが光沢を放っている、何か、革のようなものでできた、黄色い靴で、そこだけ全体に馴染んでいない。
 扉の奥は薄暗い。黄昏色の絨毯が、そのまま続いている。
「どうぞお客様」
 フゥルは言う。
 背後から、二人の無言の圧力を感じる。
 仕方ない。もう、最初から俺のターンだった。決定権はずっと俺にあった。真鶴を追うと決めたのも俺、ここに入ると言い出したのも俺、階段を上ったのも俺、俺だ。
 笹野の温度を感じる。
 俺は先に立って、一歩踏み込んだ。風が吹いてくることも、炎が燃え上がることも、なかった。
 だけど笹野は呟く。
「大丈夫よ。疑わないで」

【2007/12/22 00:22】 | 【本編】 何かの家 1 | トラックバック(0) | コメント(1)
そらひ 26


階段を覆う黄昏色の絨毯の、柔らかい毛を踏みしめながら、まずは俺が階段に足をかけた。靴越しに伝わる感触は、まるで生き物の上を歩いているようで居心地が悪い。さらに、辛うじて爪先立ちできる程度のものから、大股で数歩あるけそうなものまでと幅に差があり、それが不規則に並んでいるものだから、不協和音のような気持ち悪さがある。
 何段か昇った時、後ろで短い悲鳴が上がった。
 「ひゃっ……!」
 「ミィ?」
 振り返ると、ミィが大きな目をさらに丸くして動きを止めていた。両手を上げて。ミィの後ろにいる笹野も、心なしか青ざめている。四つの瞳は、僅かな曇りもない黄金色の手すりを凝視している。
 「ナカ君……この手すり、あったかいよ」
 「は?」
 真鍮製と思しき手すりに手を乗せる。ほんのりと温もりが伝わってくる。だがそれよりも、脂肪で膨らんだ腕のような弾力に肌が粟立つ。すぐに手を離す。これを支えに、階段を昇ろうとは思えない。
 頭を左右に振ると、ミィが唇を突き出し膨れ、笹野は小さく溜息をついた。

 再び前を向き、時折バランスを崩しそうになりながら昇る。
 階段はそう長いものではなく、たいした時間をかけずに一番上に辿り着いた。バランスを保とうと、普段使わない筋肉を使ったせいか、段数の割に疲労を色濃く感じる。
 肩で一つ、息を吐き、扉の前の人物を見る。
 それはなんとも奇妙な形をしていた。体のあちこちが捩れていて、右半分は前を向いているのに、後ろ半分は後ろを向いている。腕も、ありえない方向に曲がっていた。そしてその顔。まるでピカソの絵画のようにパーツのバランスが崩れていて、さらに片目は爛々と輝いているのに、もう片方は眼窩に目玉が吸い込まれてしまったかのように、昏い闇が広がっていた。
 袖口や襟、裾にレースがあしらわれた黒のワンピースの裾を摘むと、彼女は優雅にお辞儀をした。淀みのない滑らかな声が告げる。


 「お待たせされまして、お待ちしておりました。中村様以下2名様。これより先、案内をさせていただいたりさせていただかなかったりするフゥルと申します。早速ですが、参りましょう。ご主人様がご趣味に精を出しながら待ちくたびれてらっしゃいます」


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【2007/12/05 01:37】 | 【本編】 何かの家 1 | トラックバック(0) | コメント(0)
いちを 26

 身体が跳んだ。それはまあ物理的に。思わず目をつぶった次の瞬間には、もう地面に投げ出されていた。
 地面? いや……
 掌が撫でる感触は毛皮のように滑らかだ。……絨毯?
「<絢爛―――――」
 笹野が、低く太い声で言った。
 俺は、振り返る。笹野もさすがに少しは慣れたのか、軽く目を見開いたものの口を塞ぐような真似はしない。最初の時よりは落ち着いた様子で、掌を意志に逆らう喉にあてる。
「火から、武装した女神が生る。デウスの頭を割って。T区K町並木公園地下■■■の家>」
「え?」
 ミィが、ふにゃりと俺の横に両手をついて、薄く汗をかいて光る額を上げ、笹野を振り返った。
「何の家?」
「………」
 笹野は、自分の顎を弱そうな指で訝しげに擦っている。
「何かの家、か」
 俺はミィの腕を引いて立ち上がる。
 笹野を振り向いても、その背後にさっき通ったはずの門扉がない。
 正面には、黄金色に輝く豪奢な階段。アール・デコ風と言うか、何と言うか、大きくうねった手すりがゆっくり上へと続いている。
 頂上に、扉。
 扉の前に、人影があった。
【2007/11/28 01:06】 | 【本編】 何かの家 1 | トラックバック(0) | コメント(0)
そらひ 25

 強い力で、身体が前に押しやられる。吹きつける強風に怖気づく心を赦さぬように。
 上手く呼吸が出来なくて苦しい。昂揚と不安が上下するスピードが尋常でなく、熱が生まれる。白い腕に首を優しく絞められているような感覚。瞬きするたびに、女神の無慈悲な眼光が突き刺ささる。

 笹野の声が脳内で響く。

 『自分を疑っては、だめなのよ』

   疑ってなんか、いない。
   疑えるはずが、ない。

 きゅぅ、と小さい悲鳴が聞こえる。ミィだ。笹野は歯を食いしばって耐えているのだろう。振り向かなくてもわかる。これまで共に過ごした時間が、想像が嘘ではないと告げた。

   女神に疑惑を抱くことは、俺を殺すことと同義だ。
   そんなに怒らなくても、直ぐに追いつく。
   そう、できているのだから。

 風の流れに逆らって、背中に感じる力を借りて、足をもう一歩、前へと出す。躊躇いは一瞬にして消えて、残ったのは明確な意思。

   何があろうと、先に進む。
   指針が共にある限り。

 ひときわ強く風が吹き付け、次の瞬間、あれだけ拒まれていたのが夢のように、あっさりと視界が開け――――――――体が地面から弾かれた。
 
 

 



 
【2007/11/23 00:19】 | 【本編】 何かの家 1 | トラックバック(0) | コメント(1)
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